てとてトライオン!


日本の南の端の方。海沿いの町にあるちょっとおかしな学校、『私立・獅子ヶ崎学園』。

曰く、「最先端の技術がつぎ込まれた近未来型全寮制学園」
曰く、「リゾート系テーマパーク予定地を転用した、最高の住環境」
曰く、「自律型作業ロボによる清潔で快適な生活サポート」
曰く、「非接触式生体認証システムによる、最先端のセキュリティを完備」
曰く、「そこはまさに地上の楽園!」

なーんてふれこみも蓋を開ければどこへやら。
巨大な台風がもたらしたシステムダウンにより、施設の大半は機能停止。
なんとか機能を回復した後も、システムトラブルの頻発で、楽園はあっという間にサバイバル。
時には、電気が止まってろうそく生活。時には、みんなで井戸から水くみ。台風対策で施設全体を地下に待避!
……なんてことをしようものなら、今度は地上に出てこない!?

施設の運営だって学生頼り。購買、警備にウェイトレス。みんなでやらなきゃ始まらない。
だけど、こんな場所でも住めば楽園。騒がし楽しい学園生活。

そんな学園にやってきた転校生。鷲塚慎一郎が入ることになったのは――

「学園復旧委員会。その名も、獅子ヶ崎トライオン!」

すぐに機嫌を損ねるシステムを直しに、今日は東へ明日は西へ、手と手をあわせてトラブル修復。
学園での最低限の生活を守るべく、トライオンは今日も行く!



≪シナリオ・プレイ感≫
 最先端の技術で作られたハイテク学園のトラブルを、ヒロインと協力して元に戻していく話。
 ライターは下原正氏、椎原旬氏、御剣ヒロ氏の3名。

 主人公も程よく熱くてノリが良く、長々とうじうじすることもないので見ていて気持ちが良いですし、それ以外のキャラもメインヒロイン、サブキャラと、上手く個性付けが為されていて魅力的に描かれており、楽しいと感じさせてくれる雰囲気作りが良く出来ていたように思います。見ていて嫌になるようなキャラもいないですしね。

 ……ただ、正直個人的にはそこまで良い出来には思えなかったかな、と。
 そんなキャラ達の織り成すにぎやかな雰囲気は見ていて楽しかったんですけど、正直あまり面白いとは感じられなかった、というか。個性的なキャラ同士での掛け合いが良かったのは確かなんですが、正直それほど褒められないかな、というのが本音。
 何というかこう、物足りなかったですね。全体的に。キャラや設定については良いんですが、シナリオがかなり平坦なものとなっており、足を引っ張ってるように感じられました。



 まず、作品全体を通して単調なきらいが結構強めだったように思えました。
 共通シナリオ、各ヒロインの個別シナリオと、基本的に概ね共通して事件が発生→ヒロインとトライオンすることで解決といった、同じような流れの繰り返しとなっていて。1周目、2周目くらいならまだ良いにせよ、3周4周と、展開に解決方法とが分かりきってるのをプレイするのはちょっとだれましたね。
 シナリオ的にもいまいち山場に欠けており、一つ二つ山それを越えたらいつの間にか終わってた感が強かったです。というか、全シナリオ共通して『月末に迫った学園祭を成功させるために頑張ろう』というノリなのに、その目的である学園祭の描写がほぼゼロなのは本気でどうかと。
 また、萌えゲーとして見ても、ヒロインと結ばれ、恋人になってからの描写がほとんどされずにさらっと流されてエンディングに入ったりするといった残念な出来でした。

 また、日常イベントがかなり少ないことも、展開のワンパターンさに拍車を掛けていましたね。
 一応事件の合間合間に挿入されてきますが、寮自室での騎士との掛け合い、サニーサイドでの勤務風景や会話などがほとんどで、あまり印象に残りませんでした。その会話内容も会長のレズネタへの芹奈のツッコミなど、同じネタに頼っているせいか似たようなのが多いですし、別にこの学園を舞台にしなくとも出来るようなのばかりですし……。『特別過ぎる設定がないのが良い』っていう意見もありましたけど、この舞台ならではの『特別』は欲しかったです。
 舞台となる学園に散りばめられたギミックは少なくないでしょうし、事件によるものだけじゃなく、そういった設定を活かしての日常でのドタバタ劇っていうのがもっとあっても良かったんじゃないかと思います。
 加えて、学生生活の描写がほぼ皆無なのはどうなんだろう、と。主人公は『学生として』転校してきたはずなのに、授業(あるっちゃありますけど、クラス全員で海にいって遊ぶののみ)や各種行事の描写が全く無いため、学生というイメージはあまり持てなかったですね。なずな先生以外では地の文でちょっと触れられるだけと、大人が全くいない子供だけのネバーランドみたいな世界観も、学校というイメージを薄れさせてました。



 あと、見せ場における盛り上げ方がこなれていない感じが。書くべきところを書かないせいで、見せ場を見せ場として機能させられていない、というか。
 そこに至るまでの過程で為される説明や描写が不足していたり、それまで全く話に絡んでこなかったことを当然のように持ち出してきたりと、どうにもいきなりといった感じが強く、盛り上がるべきところを盛り上げられていない気がしましたね。もう少し、事前にじっくりことこと各キャラの心情を描写するなどしてればもっと良くなっただろうな、と思える場面は多かっただけに、そういうところは残念でした。
 そらまあ全体的にテンポ良く読めるんですけども、急ぎ過ぎるばかりでなく、もっと書くべきところをしっかりと書くなりして緩急を付けることも必要だったと思います。

 そこら辺に関係することでもあるんですが、全体的にトライオンという設定に依存しているように思いましたね。
 誤解やわだかまりがある相手だろうと、一緒にトライオンし、嘘偽りが存在しない場所で心と心を繋がり合わせることで和解して万事解決、という手法にシナリオ面でも恋愛面でも必要以上に頼っているような。
 言葉を交わさなくてもトライオンすることで理解し合えた、だから言葉を重ねる必要が無いとばかりに、面と向かって話し、交流することで絆を深めていくといった描写についてはかなりおろそかになっているように思えました。
 実際、個別シナリオでお互い告白しあうまでの間でお互いを意識するような描写がトライオンする場面以外でほとんど見られないため、その状態で恋仲になられても、正直説得力が感じられなかったです。
 そういう場面はきっちりとキャラ同士の会話で筋道立てて描写した方が面白みも出るでしょうし、魅せられると思うんですけども……。

 というかそもそも、トライオンに関する設定がいまいち描写されてないような。
 学園機能の端末にアクセスすることと、トライオンした者同士の心と心が繋がることとの理由付けが作中で全く為されていないのに、問題の解決やヒロインと惹かれあう描写に対してなど、話に合わせて都合良く使える万能ツールにされてもなあ、と。
 お互いの心を分かり合うことにより、ただ言葉を交わすよりもずっと深く分かり合える……っていうのを描写したかったんでしょうけども、作品全体で使ってるんですからもっとちゃんとした説明や描写を入れるなりして欲しかったですね。

≪グラフィック≫
 原画家はたけやまさみ、いくたたかのん氏の2名。
 CGは全97枚、差分は1〜12枚ほど。

 全体的に安定して高いクオリティで描かれていると思います。
 キャラの持つ可愛らしさや元気さ、といったものが上手く出ていましたし、立ち絵も豊富に用意されていることもあって雰囲気を引き立てる重要な要素となっていましたね。えちぃシーンでの肉質なんかも良く出来ており、満足な絵柄でした。

≪サウンド・ボイス≫
 ボーカル曲はNANA嬢でOP『Try on!』、ED『てとて、ぎゅっと』の2曲。
 どちらも作風と合った、アップテンポで明るめな曲調ですね。良い出来だったと思います。
 BGMは全29曲。
 各種揃っていますが、やはり力が入れられてるのは楽しげで明るい曲調のものですね。出来としては十分水準以上にあるんじゃないかと。

 ボイスについては普通に問題ないでしょう。どの役者の方についても、キャラに合わせた演技をされてるかと思います。

≪システム≫
 フルインストールで4G、ディスクレス起動可。
 プレイしていて不便に思うようなことはなかったですね。必要なのは揃っているかと。

 ただ、日付変更時のアイキャッチやトライオン時の演出、台風なんかの際の演出など、長い割にスキップで飛ばせたりor早められたり出来ないため、地味にだれさせられました。
 また、2周目以降での誕生会などの各種イベントで、既読文がフラグの関係かスキップ出来なかったりするのもちょっと。

≪えちぃ≫
 シーン回想は全16シーン。内訳は夏海:4、手鞠:4、一乃:3、鈴姫:5。
 作中では繋がっていたのを分けたりしてるので、実際のところは1人2、3シーンくらいですね。

 シチュとしては100%和姦です。まあ当然っちゃ当然ですが、全シーン双方同意の純愛な内容ですね。
 プレイ内容としてはキス、愛撫、フェラ、パイズリ、シックスナイン、各種体位、といったところ。概ねオーソドックスといった感じです。一乃で1回アナルがあったりしますが、気にするほどでもないでしょう。

 純愛モノのシーンとしては質・尺とそれなりには良いんでないかと思います。原画の方も割かしえっちく描かれていましたし。

≪総評≫
 キャラは魅力的ですし、設定自体も悪くはなかったんですが、そういった設定をシナリオにも萌えにも活かせておらず、全体的に粗が感じられてしまう作品だったように思います。。ハイテク学園という舞台を活かしたドタバタ劇っていうのを期待してたんですが、どうにも単調+平坦で、期待外れだった感は否めないかな、と。
 素材は良かったですし、これでシナリオも伴っていたらA+〜S評価でも付けられそうだったのが悔やまれます。

 08/09/21


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