沙耶の唄


爛れてゆく。何もかもが歪み、爛れてゆく。
交通事故で生死の境をさまよった匂坂郁紀は、いつしか独り孤独に、悪夢に囚われたまま生きるようになっていた。
彼に親しい者たちが異変に気付き、救いの手を差し伸べようにも、そんな友人たちの声は決して郁紀に届かない。
そんな郁紀の前に、一人の謎の少女が現れたとき、彼の狂気は次第に世界を侵蝕しはじめる。


シナリオ・プレイ感
 事故によって世界の全てが異形のものとしか見えなくなった主人公、郁紀が、『沙耶』という少女との出会いをきっかけとして狂気の世界へと足を踏み入れていく、という話。
 ライターは虚淵玄氏。

 ジャンルとしてはホラーと銘打たれてはいるものの、怖かったのかと思えばそうでもないですね。
 ゲーム開始直後から画面全体に肉塊たちが奇声を上げながら談笑してたり、背景が臓物をぶちまけたようになってたりしますが、こう、内側からぞくぞくと責め立ててくるような恐怖ではないです。劇中でのカニバリズムやスプラッタといったのにしても、グロテスクな描写がそのまま恐怖には繋がるわけではないですし、驚きというレベルを越えることはありませんでした。
 というか、恐怖の対象である沙耶の正体については結構早い段階で提示されますし、彼女は可愛げのある描写がほとんどであるため、ホラーとして見ると微妙です。

 ですが、主人公が狂気へと染まっていく様はなかなか薄ら寒いものがありましたね。
 事故によって歪んだ世界の中でただ一人だけ普通に見える沙耶に惹かれ、お互いに愛するようになっていく、そんな当人の視点から見ればそれはもう『純粋なラブストーリー』なんですが、第三者から見たそれは完全に『狂人へとなっていく過程』で、と。
 ただ、当人と第三者の視点から描く『狂気』の描写は上手かったんですが、物語中盤から視点が完全に親友である耕司にシフトして、彼から見た郁紀と沙耶はラストまで敵として描かれてしまうため、二人の純愛としての物語に水を指してるような気はしましたね。トゥルーエンドでは郁紀視点に変わりますが、エンディングでまた他の視点になりますし。
 それでも、二人の純愛だったりその切なさは話として面白かったと思います。

 選択肢は二つしかなく、間違えば速攻でバッドエンド直行ですので難易度は皆無。
 3、4時間もあればコンプリート出来る程の長さではありますが、無駄を極力省いているためか内容は十分に濃いですし、読ませる文章ですので不満は感じませんでしたね。
 ただ短いことによる弊害か、登場人物への感情移入はしづらかったかなと。郁紀と沙耶については十分な描写だと思いますが、他のキャラについては弱めですね。瑶が郁紀を想う理由だったり、涼子が狂ったように奥涯を処刑しようとする理由だったりといった部分が曖昧だったような。特に後者の方は一般人だった彼女にそこまでさせるような出来事はなんだったのか……っていうことが抜け落ちていたため、その理由がいまいちよく分からなかったですね。

グラフィック
 原画家は中央東口氏。
 CGは差分込みで全85枚、差分はほとんどありません。

 全体的に薄暗い感じですが、線がしっかりしていて存在感のある絵柄ですね。雰囲気としてはCG、というよりかは小説の挿絵といった印象の方が強いです。
 また、話として重要になるグロについても気持ち悪いくらい(褒め言葉として)上手く、生々しく描けていますね。
 冷蔵庫のタッパーの中身なんかはナチュラルに吐き気が。

サウンド・ボイス
 ボーカル曲はOP曲『沙耶の唄』とED曲『ガラスのくつ』の2曲。
 どちらも切ない感じが上手く出ている曲ですね。個人的にはEDが好きです。

 BGMは全13曲。全体としては落ち着いた、どこか影のある曲調がメイン。物語の狂気とマッチしていましたね。

 ボイスについても特に問題なしかと。『デモンベイン』でも出てた大導師はともかくとして某修羅の人の声に遭遇するとは思ってませんでした。
 というか、深井晴花嬢の役は悲惨でしたね。

システム
 フルインストールで250MB、ディスクレス起動可。
 プレイしていて問題になることは特にはなかったですね。

えちぃ
 シーン回想はなし。シナリオの中で挿入されるのは大体6シーン程でしょうか。
 シーンのあるのは沙耶と瑶の二人ですね。見た目は。実際のところを想像すると結構きついものがあります。
 シチュは愛撫に騎乗位、パイズリといったオーソドックスな感じです。あとほんの少しだけ触手など。沙耶にのみ、1シーンだけ他人に犯されるのがありました。

総評
 キャッチコピーの通り『世界を侵す恋』を描いた物語。
 ホラーとしてはあれですが、純愛の一つの形としての物語は面白かったですね。

 07/11/08


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