キラ☆キラ


「青春+恋愛+ロックンロール!!」

前島鹿之助はミッション系の学校『欧美学園』に通う学生だ。部活にも顔を出さず、受験勉強にも身を入れずにアルバイトにばかり精を出すちょっとダメな毎日を送っている。
そんな彼が、バイト先でかなり変った女の子『椎野きらり』と出会い思いがけずパンクバンドを結成してしまうところから、鹿之助の物語が始まるのであった。
バンドのメンバーは、鹿之助、きらり、幼馴染の『石動千絵』、それから病弱な資産家令嬢の『樫原紗理奈』。
彼らは、存在感のほとんどない、もう廃部も決定してしまった『第二文芸部』の部員たちである。最後の晴れ舞台、文化祭で目立つために立ち上がったのだ。
無謀かと思えた挑戦だが、エキセントリックな特訓を繰り返し、平和だった欧美学園にロックの騒乱を引き起こしつつも文化祭ライブを成功させてしまう。
これでもう満足。バンドは解散。普通の学園生活に戻るはず…だった。
だけれども、最後にライブハウスで行った演奏の模様がインターネットで配信されると、彼らの元に出演の依頼が舞い込んでしまう。
どうしよう? もう受験だよ? 家族も反対してるよ?
知ったことか!
そして四人は今にも壊れそうなオンボロワゴンに楽器と夢とそれぞれの期待を積み込んで学園生活最後の冒険として長い旅に出発してしまうのであった。


≪シナリオ・プレイ感≫
 所属する部活の最後を飾るため、メンバーと一緒にロックバンドをすることを思い立つ話。
 ライターは瀬戸口廉也氏。

 物語は全3つのチャプターからなります。
 文芸部部員たちと一緒にバンドをやることを決め、文化祭に向けて練習していく姿を描く、チャプター1。
 メンバーと共にワゴンを駆って各地のライブハウスを回るツアーを行い、そして少しづつヒロイン毎のシナリオへと分岐していく、チャプター2。
 そして、本格的に個別シナリオに入っていくチャプター3と。
 一応1つだけ、4つ目のチャプターがあったりするシナリオはありますが、概ね3つと考えていいかと。

 所属する部活の最後の活動として、メンバー全員が一丸となってバンド活動というひとつのことに対し、脇目も振らず、他からどう思われようと構わずに熱中して、その後は夏休みを使ってメンバーだけで車でツアーをして、と。
 前半部となるチャプター2までにかけて、そんな青春を堪能できますね。
 辛いことを忘れられる、あまりにも楽しい時間と、それが少しづつ、けれど確かにゆっくりと過ぎ去っていく、ノスタルジックな感傷。そんな、ほろ苦さを持った展開。……何か、いくつかの意味で目から熱いものが流れそうになりますが、気のせいでしょう、きっと。

 題材として扱われるバンドについてもも個人的には疎くて全くずぶの素人でしたが、、序盤、同じく分からない主人公以下部員に対しての友人からのしつこいくらいの説明、という形で丁寧に説明されているので、すんなりと入っていけましたね。
 行ったことはないですけど、ライブ独特の雰囲気……っていうんでしょうか? 暗くて狭い箱に人がいっぱいに詰まり、耳をつんざくような音の波の中、熱狂に支配される……そんな空間を包む熱気が、はっきりと伝わってきました。

 エンディングは千絵が1つ、紗里奈がバッド含め2つ、きらりにノーマル、トゥルーの2つと、それらとは別のバッドが2つ。恩田エンドは噴きました。
 千絵、紗里奈、きらりのエンドを見ると、最後のきらりトゥルーエンドが解禁される作りですね。
 
 個別シナリオは、共通でも匂わせていた、ロックをしている間忘れることが出来た各ヒロインが抱える現実が中心になってきます。
 共通シナリオでのアッパー寄りな青春の雰囲気とはうって変わり、傾向としてはかなりダウナーですね。人間の持つ内面の暗い部分を、前面に押し出しているためか。

 物語を通して描かれるのは……『幸せ』ということの意味、でしょうか。
 全体を通してただ、登場人物は全員幸せになろうとしていただけ、なんですよね、結局は。考え方の違いこそあれ。けれど、そこに食い違いが生まれ、誤解へ姿を変えていき。
 最低限のご都合主義はあるものの、シナリオ面ではリアリティが強く、エンディングも全てが全て上手くいくわけでもないため、いくらかの問題が残っていることを示唆しながら終わりますが、余韻を残すいいものだったように思います。
 『キラ☆キラ』という作品内での話としては終わりではあるものの、登場人物たちにはまだこれからがあって、エンディングは通過点でしかなく終着点としては描かれていないためか。

 ただ、その中でも紗里奈、千絵のシナリオとは違い、きらりシナリオはかなり異色、というか、群を抜いて重苦しいですね。
 どうしようもない問題はすぐそこに迫っていて、彼女の家の住人でもなく、手を差し伸べるだけの力もないという状況の苦しさと、もどかしさと、やるせなさと。流石にいくらなんでも死ぬとは思ってませんでしたけど……。
 まあ、その後一気に時間経過させて主人公とプレイヤーの心境をシンクロさせる手法もあって、非常にシナリオに引き込まれたんですが。少しづつボディに来るように実感させていくのは利きました……。

 個人的に最も印象深いのは、きらりの1つ目のシナリオ。きらりの、というよりかは、主人公自身のっていう方が正しいですね。
 大切なものを失い、漫然と生きている中で、ふとしたことから主人公自身の持った歪みと向き合っていくシナリオ。失ったものが自分にくれたものを噛み締めながら、それまでの自分の生き方と、決別を果たす物語。
 どんなに辛いことがあったとしてもと、生きていくしかない。
 たとえ大事な人が失われて、自分の中での『世界』は暗い闇に満ちたとしても、それでも『世界』は止まることなく動き続けて。クソッタレで、ファックで、それでも、キラキラとしていて。そんな世界で、生きていくしかない、ということ。
 そんな、叫びたくなるような寂しさと、物悲しさを持った、けれど、希望を持ったシナリオ。
 多分、このシナリオがライターの書きたかったもの、なんだと思いました。

グラフィック
 原画家は片倉信二氏。
 CGは全104枚、差分は大体1〜3枚程度。

 『グリーングリーン』などでの氏のものと比べると、なんとなく鮮やかになったように思いますね。ですが過剰にといった印象は受けず、抑えるところは抑えた、といった感じ。薄暗いライブハウスの中にあっても、映える描かれ方でしたね。

 脇役にもしっかり立ち絵あるのは好印象ですね。それなりに出番のある妹のがないのはあれですが。というか、両親のはあってよかったんじゃないかな、とか。

≪サウンド・ボイス≫
 ボーカル曲は
 第二文芸部バンド:『キラ☆キラ』、『Let's Jnmp!』、『君の元へ』、『O.H.B.I』、『go on a trip』『traveler』、『lead to you dream』、『Like a Life,Like a Live!』
 HAPPY CYCLE MANIA:『a song for』
 STAR GENERATION:『Too Fast To Live Too Young To Die』
 ……の全10曲。BGMは何曲か不明。結構数はあるかと思います。

 音楽をメインに扱ってるだけに、ボーカル曲、BGMともに質は全体的に非常に高めかと思います。場面の雰囲気とマッチしたものばかりでした。
 それだけに、BGM鑑賞モードがないのが惜しいですね。

 チャプター2では西日本の各地を回ることになるわけですが、しっかりと方言で演技されており、『ああ、旅してるんだ』っていう実感が沸きました。

 ボイスは非公開ですが、聴く限りだとメインでは千絵姉がかわしまりの嬢、脇役で紫華すみれ嬢に深井晴花嬢、Yuki-Lin嬢でしょうか。他は分からなかったですけど。
 何気に脇役勢が豪華ですね、これ。普通にメイン張れるような。あと、紫華すみれ嬢ボイスは久々に聴きました。京都弁が割と新鮮でした。
 演技の質は高く、問題になることはないかと。

システム
 フルインストールで1.6G、ディスクレス起動可。
 選択肢でカーソルが自動追尾して間違って押してしまうことは数回あったものの設定で変えられますし、その他でも特に不自由することはなかったですね。

≪えちぃ≫
 シーン回想は全7シーン。内訳はきらり:2、千絵:2、紗里奈:2、その他:1。

 シチュとしては愛撫、フェラ、正上位と、オーソドックスなのが中心ですね。着衣は私服メインで制服、ライブ服のが少しある程度。
 特殊なので京都弁の年上のお姉さんに女装したまま後ろから手コキされるとかありますが、概ね薄味ですね。まあ、そういうのを楽しむような作品では全くないので一切の問題はないんですけども。

≪総評≫
 バンドモノ、ということで経験ない身では少し敬遠していましたが、蓋を開ければいつの間にか引き込まれていました。いつか失った青春を思い出させてくれます。

 シナリオは決して甘くはないですが、それでも終えたあとに何かが残る作品でした。心から、プレイ出来てよかったと思いますね。

 08/01/19


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