クロノベルト
〜あやかしびと&Bullet Butlers クロスオーバーディスク〜


■「かりそめの旅人たち」篇
「アルフレッド・アロースミス」は雲外鏡という名の妖によって、「あやかしびと」の世界、すなわち神沢市に迷い込んでいた。
「失った大切なモノがある」
そう言われた彼は、自分の失ったモノが何なのかを確かめるために神沢学園の生徒会の手伝いを行うことになる。
折りしも学園祭は間近、あれやこれやと雑用に奔走するアルフレッド。
だが、そんな日々のなか雲外鏡からの凶報が突如舞い込んでくる…。

■「復讐するは神になし」篇
銃と魔法、剣と科学の世界ゴルトロック。そこに、雲外鏡の導きによって一人の少女がフォルテンマイヤー邸に迷い込んできた。
「コゼット」に可愛がられ、幸福な日々を送る少女。
一方、やはり雲外鏡に導かれた死者、「九鬼耀鋼」がゴルトロックへとやってくる。
彼は復讐の念と共に少女を止めなければならないという義務感を抱いて、執拗に少女を狙う…。

■「クロノベルト」篇
「あやかしびと」の舞台である神沢市と「Bullet Butlers」の主な舞台であるオセロットシティ。
この二つが混じりあった「混沌都市」で、「あやかしびと」の登場人物と「Bullet Butlers」の登場人物たちが激しい死闘を繰り広げていた。
だが、その戦いに疑問を感じた「如月双七」と「リック・アロースミス」は協力して、混沌都市の謎を探り始める…。


≪シナリオ・プレイ感≫
 ライターは東出祐一郎氏。

 現代日本を舞台にした『あやかしびと』、それとは対照的なファンタジー世界が舞台の『Bullet Butlers』の2作品間でのクロスオーバーという、商業作品では結構珍しい試みということでどうなるものかと思っていましたが、杞憂に終わってくれましたね。
 両作品の設定を崩すことなくコラボして、それぞれの魅力を上手く引き出した、良質のクロスオーバーが堪能出来ました。独立した話としてではなく、もしかしたらあり得たかもしれないifの後日談として面白かったです。
 各シナリオのプレイ時間は大体2〜4時間ぐらいと短めですが普通に量はありますし、よくまとめられていたかと。とりあえず、ファンディスクのシナリオとしては十分な長さ。

 プレイ開始してまず最初に選べるのは『あやかしびと』の黒木耀鋼、『Bullet Butlers』のアルフレッドと、本編では敵であり、戦いの中で命を落とした彼らそれぞれに主眼を置いた、彼らへの救済となるシナリオ。
 どちらからでもプレイ出来ますが、一応時系列としては九鬼→アルフレッドと続きますね。まあ最初にアルフレッドでも全く問題無いですが。
 で、その2つをクリアすると双七、リックの各作品の主人公達を主役とした最終シナリオである『クロノベルト』が解禁される作りとなっています。
 概ね一本道でたまに選択肢が入りますが、基本的に間違っていればバッド直行なので、特に難易度としては高くは無いですね。
 
 以下、各シナリオの感想。

『復讐するは神になし』
 九鬼耀鋼inゴルトロック。全てをやり直したいと願った少女と、復讐を果たそうとするある鬼の話。
 全体的に戦闘に重きを置かれたシナリオですね。無駄なところを極力省いているため、さくっと読み終えられました。
 ただ、正直ちょっと省き過ぎかなーと。もう少し無駄な部分はあっても良かったですね。屋敷襲撃後に入れるのは難しいとしてその前、エルネスタ戦〜屋敷襲撃までの間の異世界での出来事とか。ベアトリス以外との会話など。
 欲を言うと九鬼VSリックなんかのカードも見たかった気はしますが、襲撃時のシチュ的に結果として最低数秒以上は復讐相手と対峙することを考えるとリックの敗北、そうでなくともわずかな時間でも膝をつくこととかにはなりそうですし、仕方ない面はありますね。
 とりあえずはまあ、異世界の敵を前に九鬼先生が『武』を捨てることなくて良かった良かった。

『かりそめの旅人たち』
 アルフレッド・アロースミスin神沢市。平穏な日常の中で、修羅へと変わっていく過程で失くしてきた何かを見つけていく話。
 九鬼シナリオと比べて、こちらは日常シーンがメインですね。戦闘もありますが、ラスト近辺でいくつかある程度。
 そのため燃え要素となる部分は九鬼よりも少なめな気はしますが、日常会話の楽しさがそれを補ってあまりあると思いましたね。キャラの個性が際立っているおり、入れてくるギャグも小気味良くて。トーニャとか、中の人の演技力もあって笑かせてもらいました。
 また、アルフレッドも本編とはうって変わりツッコミ役兼良き相談役としてなっていますね。双七や愁厳、薫たちとの触れあいの中、これまで戦闘の中で生きてきて人として失くしてきたものを少しづつ取り戻していくアルフレッドの心境が良く描かれていたかと。
 ラスト、ようやく見つけた己の夢のため、たとえ勝ったとしても自分には何の利も無い戦いへと赴く姿は単純に熱い展開でした。
 
『クロノベルト』
 前2シナリオの立役者だった雲外鏡の目的が明らかとなり、『あやかしびと』、『Bullet Butlers』両作品のキャラが一堂に会す最終シナリオ。

 前半部と後半部に分かれているんですが、個人的にはちょっと前半部は雰囲気が肌に合わなかったですね。黒幕となる相手により無意識の内に操られ、各作品陣営毎に真剣な殺し合いをさせられてと。植えつけられたものだとしても、本心からの憎悪を持ってのお互いに殺り合う展開で。主人公、ヒロインともに何回か死ぬ場面もありますし、比喩抜きで。

 ですけどその分、過去の好敵手の参戦以降の燃え展開は盛り上がりましたね。
 悪夢から覚めた後、失意の淵から立ち上がり、協力して圧倒的な彼我戦力差の前に自分たちの存在理由を賭けた戦いに挑むのは、ベタながらやはり燃えます。
 あと、ラスト近辺にて、『かみはばらばらになった』というフレーズがよぎったのは絶対に自分だけじゃないと信じてます。学園祭でもトーニャのセリフにネタ仕込んでたりと、おそらくはあれを意識してるような。

 しかし、あの女があんな三下染みた終わり方するはず無いとは思いましたが、エンディングに至っても黒幕は未だ健在ですね。あれに完全勝利するのって本体位置を完全に特定+逃げる隙も与えずに消滅とかさせない限り無理だと思うんですが。
 とりあえず、これは『Bullet Butlers』の続編か、ノベルなんかでの展開するかの伏線と取って良いんでしょうか。ついでに完全クリアでオープンになる壁紙に『あやかしびと弐』とか書かれてますが、これはマジと取るべきかネタと取るべきか。
 
 まだ悪役は健在という尾を引く終わり方で消化不良になりそうでしたが、その数秒後に覆されました。
 九鬼耀鋼への最後の救済、ようやく辿り着いた旅の終着点で。漢の涙は心に込み上げるものがありましたねー……。たとえ狙ってるのが分かっていても、熱いものが。

 九鬼と同じようにアルフレッドもまた、一人の男として愛する者と歩んでいく未来により救われていますが、対照的に双七、リックには諸手を振ってのハッピーエンドではありませんね。
 これまでの自分の支えだったもの、心の中で大きなウェイトを占めていた存在の無い世界でその記憶を抱えたまま生きていくとか、あまり想像はしたくない気持ちですし。まあ、それを認めた上で歩んでいこうとする強さの持ち主であり、友がいて、仲間がいる世界ですから決して救いが無いわけじゃありませんが。


 ……と、まあ、シナリオ面の強いファンディスクとしては間違いなく面白かったんですが、欲を言えばもうちょっとよくあるファンディスクっぽい要素も欲しかったかな、とか。特定ヒロインにスポットを当てたサイドストーリーだったり、デスクトップアクセサリだったり。壁紙が7つくらいある程度ですし。
 あと、すず、セルマ好きには結構きついものがあるんじゃないかなーという面はありますのでいくらか注意してた方が良いかと。特にすずスキーの方に至っては泣きそうです。

≪グラフィック≫
 原画家は中央東口氏。
 CGは全73枚、差分は1〜11枚程度。

 全体的に特に問題はありませんね。崩すところは崩して、戦闘シーンなんかの場面では空気感や臨場感を上手く描いていて。
 ただ、こうして2作品が肩を並べてるところを見てると、どうしてもバレバト組の方が見劣りしてしまうのはありましたね。微妙に体に対しての頭の大きさが合ってないところとか。特にキャロルとかキャロルとか。

≪サウンド・ボイス≫
 ボーカル曲はAntistarでOP『to the edge』、ED『awaken from…』の2曲。
 BGMは両作品それぞれのものと今作の追加分で全47曲。
 ほぼ全て両作の原曲ではありますが、燃えられたことには変わりありませんね。『蚊』、『Butler』など、そのシーンの盛り上がりと合わせて好きです。

 ボイスの方もさしたる問題は無いですね。各主人公、ヒロイン、サブキャラと上手い具合に演技されてます。やっぱりゴトゥーザ様は良いですねー。声の抑揚の使い分けとかが。銭湯とか、ノリノリですし。

≪システム≫
 フルインストールで3.5G、ディスクレス起動可。
 クイックセーブ・ロード、選択肢までのジャンプなど、必要なものは揃っているかと思います。左クリックしている間中スキップとかは何気に使いやすくて良かったですね。

≪えちぃ≫
 シーン回想は全11シーン。内訳としてはルダ:1、雲外鏡+マグダラ:2、薫:1、トーニャ:2、刀子:2、セルマ+マグダラ:1、ヴァレリア+雪:1、コゼット:1。

 雲外鏡ので触手凌辱があったりしますが、あとはどれも双方同意での和姦ですね。ルダと雲外鏡以外のは本筋とは違う、選択によりあり得る可能性としてのものといった感じです。
 プレイ内容としては、フェラ、自慰、シックスナイン、各種体位、触手といったところ。
 シーンの尺は短めですし、特に見所があるわけでもありませんね。作品としてはあってもなくてもといったところなので問題は無いんですが。

≪総評≫
 2つの作品の魅力を上手く組み合わせた、良質のクロスオーバー作品。
 『あやかしびと』と『Bullet Butlers』の両方をプレイして気に入った人にはそれぞれの後日談として十分にオススメ出来ますし、そうでなくてもどちらかやったことがあるのならこれで触れてもう片方をやってみるのもアリだと思いますね。

 08/06/01


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