春色桜瀬


――恋桜。
学園に伝わる、一つの伝説。
その桜の木の下で出会った男女は、運命的な恋に落ちるという。
沖田陸にとって、それはなんの興味もない、どうでもいい内容だった。

けれど、季節は春。
満開に咲き誇る桜の木の下で、陸は一人の少女と出会う。

「一つ、予言してあげる」

桜の花びらが舞う中、少女は小さく微笑む。
そして、告げられる言葉。

「きっと君は、私に恋をするよ」

恋桜。その伝説がゆっくりと動き出す。


≪シナリオ・プレイ感≫
 ライターは東トナタ氏、有馬ケンジ氏の2名。

 ……まあ、正直。全体的に微妙な出来としか言いようが無い、というのがプレイしての率直な印象でしたね。
 パープルの売りである演出面についてはいつものことながら力が入れられており、素直に評価します。この面においては全ブランド中でもかなり上位に食い込みそうです。
 ただ、確かに優れた演出ではあるんですけど、テキスト・シナリオ共に退屈な出来で、宝の持ち腐れになっている感は否めませんでした。ライターの方がどうにも自分が見たい、書きたい場面を書いて満足して、それ以外の描写がおざなりになっているきらいがかなり強くて。どんなに良い演出があっても、それにより引き立てられるシナリオにそもそも魅力が無いとあっては意味を為さないんですよね。



 とりあえずシナリオ面で強く思ったのは、話運びにメリハリというものが全く感じられないこと。

 まず共通シナリオですが、オープニングでヒロイン全員の顔見せが終わってからは1日が始まるとヒロインの誰かが起こしに来て、隣近所に住んでるこのは、撫子、くーに同居している妹の綾乃を加えた4人と食事、それから一緒に学園に行って、学園内にいる間、放課後、そして1日が終わるまでと、常に同じメンバーで同じような会話内容を同じように繰り返して……という流れが共通シナリオ中連日延々と続いていくので、プレイしていて非常にダルかったですね。ここまで行くともう『一緒にいる』ではなくて『付きまとってる』とすら感じられてしまうレベル。一人にさせてくれません。誰とどう過ごすかくらい選択させてくれたっていいでしょうに。
 そこで描かれる内容も主人公を巡ってのヒロイン間での嫉妬やら言い争いばかりと単調で、見てて飽き飽きしてきます。ぶっちゃけいくらかスキップしてもほとんど同じことやってますしねー。
 また、常に同じコミュニティでばかり行動しているせいでそれ以外のキャラが関わるのが難しくなってしまっており、結果ヒロインなのに桔梗、春奈との関わりが薄く、浮いてしまっていました。

 あと、同じようなネタの使い回しをし過ぎでしたね、どう見たって。
 ヒロインが起こしにくるとかはまだしも、会う度いつも空腹で行き倒れて玄関前で倒れてるとか、壊滅的な味の料理を作って主人公に食べてもらう→轟沈とか、普通1、2回も使ったらそれっきりなネタを何度もしつこく使ってきて非常に鬱陶しかったです。
 育成SLGとかじゃあるまいし、何度も何度も同じ展開を見せられても苦痛にしかならないと思うんですけどねー。おまけにリアリティの感じられないネタだったら尚更のこと。

 で、そんな単調・冗長な共通シナリオをようやく越えて個別シナリオに入ってみれば、こちらも褒められた出来とは到底言えはしないという……。
 何というか、『読める』ものばかりなんですよね、展開が。『王道』と言えばまあ聞こえはいいんでしょうけど、これの場合はただの『ありきたり』。意外性のあるようなものがほとんどあらず、概ね予想通りな展開で占められており退屈でした。もう少し捻った展開にしてくれても。
 また、長々としていた共通と比べると、確かにさくさくと進みはするんですよ。いっそプレイヤーを置いてけぼりにするくらいに。全体的に説明不足なきらいがかなり強く、そこは描くべきだろと思う場面がすっぽり抜け落ちてる、なんてことがざらにあったりと。過程を経ずに、結果のみを描いているため、興醒めすることがしばしば。
 例えばこのはシナリオ、あと1週間でこのはが消えるという下りがあるんですが、普通なら一日一日を描いていくところをたった二日のみであとは端折ってエンディング→数分も経たない内にエピローグで即復活だったり、桔梗シナリオでは両親との確執が描かれ、ここからどう和解に持っていくのかというところでエンディング→エピローグ、そこにはいつの間にか両親と和解した二人の姿があったりと。



 恋愛モノとしては肝心な部分である恋愛描写についても、いまいちだったように思いましたね。少なくとも、とても上手いとは。
 オープニング終了以降は常にこのは、撫子、くー、綾乃と一緒に行動という場面がメインになってくるんですけど、正直説得力が感じられないんですよね、全然。
 ヒロイン全員、最初から主人公に対しての好感度が非常に高めなんですが、それを納得させてくれるに足るような過程が全く無いのにそんなハーレム状態だけ見せられてもありがたみがありません。ほんの1回話しただけのサブキャラに至るまで次会った時には主人公を巡っての奪い合いとか展開されたのにはもう失笑ものでした。
 というか、『俺は恋出来ない』とか何とか言って自分からはヒロインに好かれるような努力を一切せず、(何故か)ヒロインから向けられてくる好意に対してもさも自分には関係ないこととばかりにひたすら無関心と、真面目に何でこの主人公が好かれるのか理解不能。
 お互いに惹かれて、少しづつ好きになっていく、そういった描写って大事だと思うんですけどねー、こういう作品においては。その積み重ねが作品の魅力になっていくと思うんですが。



 キャラについては、上記のこともあって主人公はいまいちですね。基本的に主体性が無さ過ぎで。これといった自己主張することなく、ヒロイン達の会話の流れにただ流されるままなので、プレイを退屈にする一因を間違いなく担ってます。
 加えて、非常に鈍感で見ていて気分良くなかったですね。作中で恋心が理解出来ないという理由付けがなされているんですが、その設定を上手く扱えてはおらず、単なる鈍感にしか見えません。というか、『恋出来ない』っていうのは『人の気持ちが分からない』っていうのと決してイコールで繋がるようなものではないと思うんですけど。
 
 ヒロインについても、正直魅力が感じられない気がかなり。常に主人公を巡っての嫉妬を繰り広げるばかりで、各ヒロインそれぞれの魅力の掘り下げがされないせいもあって。もうちょっとこう、一歩引いたところからヒロインを描くとかした方が良かったんじゃないかと思いますね。キャラゲーとしてはこの欠点は痛いです。

 で、その恩恵をかなり受けてしまってるのは撫子でしたね。動かし方が微妙なため、ウザったく感じてしまうこと多々。
 付き合ってもいないのに無闇矢鱈に嫉妬して、主人公が他のヒロインと話してれば率先して妨害、そのくせ自分からはツンツンするばかりで理不尽に突っかかってきたりと、近頃よく見かけるヒステリックとツンデレを勘違いしてるようなヒロインにしか見えなくなってしまってます。自分で主人公のベッドの中に入っておいて体触ったことにキレたりとか、ワケ分かりませんでしたね。触られてもおかしくない場所に自分から入っといてキレるのは身勝手だろと。
 悪いところは悪いところとしっかり認めて謝るとか、デレの部分をちょくちょく織り交ぜていくとか、そういう基本的な料理の仕方さえしっかりしてれば可愛くも思えるんでしょうけども、この場合は失敗してるとしか感じられませんでした。

≪グラフィック≫
 原画家は月杜尋氏、悠樹真琴氏の2名。
 CGは全121枚、差分は1〜8枚程。

 んー……劣化、してません? 原画、塗りと全体的に。『秋色恋華』なんかの時と比べると、どうにもそんな気持ちが沸きました。シナリオダメなのは覚悟してた部分はありましたけど、最後の拠り所すらこの様って。
 ぱっと見た限りであれば可愛らしいと思うんですけど、ところどころ体のバランスがおかしかったり、輪郭がやけに急だったりで。妹、くーの後輩組とか、頭の幅と体の幅の長さがほとんど同じで違和感が。
 というか、メインヒロイン中ハーフという設定のくー以外全員黒髪オンリーで、画面がちょっと華が無いというか、地味な気が少し。
 塗りについては、肌色が足りないというか、いやに白くて生気が感じられなかったりでしたね。加えて、影の描き方が薄くてのっぺりとした印象を受けてしまいます。

≪サウンド・ボイス≫
 ボーカル曲は橋本みゆき嬢でOP『恋桜』、ED『』Dazzle Pink』。BGMは全33曲。
 BGMは全体的にアップテンポで明るめな曲調のものが多めですね。それに加えてシリアスな場面のものなど、一通り揃っています。出来としては水準以上のものではあるかと思いますね。

 ボイスの方は概ね合っていましたし、演技力もあったように思います。ただ、撫子のちょっといまいちでしたね。やたらと口調が早くて、キャラとしての描き方も相まって『やかましい』という印象がありましたね。

≪システム≫
 フルインストールで1.92G、ディスクレス起動可。

 概ね使いやすいシステムだったかと思いますね。色々設定も出来ますし。ただ、タイトル画面からクイックセーブしたデータを呼び出せるようにとかして欲しかったですね。いちいち一度本編を始めてクイックロードする手順を踏まないとで。

≪えちぃ≫
 シーン回想は全15シーン。内訳はこのは:3、撫子:3、くー:3、桔梗:3、春奈:3。

 シチュは当然ながら全シーン和姦ですね。オーソドックスな。
 プレイ内容は愛撫、フェラ、パイズリ、手コキ、足コキ、各種体位、といったところ。面白みのあるようなのはそんなにありませんが、こういう作品としては妥当なものかと思います。

 質については普通といったところでしょうか。特別悪いというわけでもないですけども。普通に始まって普通に終わる、といった感じで味気ないような。
 また、尺があまり長くないのに加え、CGが微妙にバランス悪かったりするのが目に付いてしまいましたね。

≪総評≫
 シナリオ構成が微妙な上にヒロインにも魅力を感じ辛く、全体的にプレイしていてひたすら退屈な作品でしたね。大変つまらなかったです。
 CG面での劣化も感じられましたし、このブランドはそろそろ演出面以外のことも重視した方が良いんでないかと思います。

 08/08/14


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